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石見の海 角の浦廻を 浦なしと 人こそ見らめ
潟なしと 人こそ見らめ よしえやし 浦はなくとも
よしえやし 潟はなくとも いさなとり 海辺をさして
にきたづの 荒磯のうへに か青く生ふる 玉藻沖つ藻
朝羽振る 風こそ寄せめ 夕羽振る 波こそ来寄れ
波のむた か寄りかく寄る玉藻なす 寄り寝し妹を
露霜の 置きてしくれば この道の 八十隈ごとに
万たび かへりみすれど いや遠に 里は離りぬ
いや高に 山もこえ来ぬ 夏草の 思ひ萎えて
偲ふらむ 妹が門見む なびけこの山
(仕事で遠く離れる辛さを歌っている)
妻の家から遠ざかり振り返ってみるけれど ますます距離は大きくなっていく 妻も私を想っていてくれるだろう
二人の間にある山が伏せてくれればいいのに
妻への愛情と未練を打ち寄せる波とその波に揺らぐ海藻にたとえて切なく歌い上げた名作です。
初出:「イラスト古典 万葉集」(文・米川千嘉子)
学習研究社(1990年11月5日)
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